川上敦子(ピアノ)

華麗なる響きで奏でるロマン派の名作

 華麗なる響き、そして深みある音楽性。川上敦子は、2001年に「演奏不可能」とされていたリスト「超絶技巧練習曲 1837年版」の日本初演で鮮烈なデビューを果たし、03年の伊福部昭「日本組曲」の演奏が作曲者から絶賛を受け、翌年のピアノ独奏版による「日本狂詩曲」初演も手掛けた実力派ピアニスト。横浜国大経済学部卒業後に渡英し、名匠ベンジャミン・キャプランのもとで5年半にわたって研鑽を積んだ、特異な経歴がまず目を引く。だが、自筆譜に基づきノンペダル奏法で臨んだ、モーツァルトのソナタ全曲演奏が聴衆に新鮮な驚きを与えるなど、この時間できっちり育んだ、確かな技巧と洞察力を武器として、常に先鋭的な場に身を置く川上。
 東京でのリサイタルは、「6つの小品 op.118」と「4つのバラード op.10」というブラームスの2つの曲集に、シューマン「謝肉祭」を添える。ちょうど1週間後に、ニューヨーク・カーネギーホールでのデビュー・リサイタルを控えているだけに、その“壮行会”の趣きも。充実の名演が、期待できそうだ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)

4/21(木)19:00 王子ホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
http://www.proarte.co.jp
※釧路・十勝・大阪公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。