渾身の指揮で聴くロシアン・ロマンティシズムの世界
『題名のない音楽会』などでのフランクな立ち居振る舞いでお茶の間にも知られ、兵庫芸術文化センター管を人気楽団へと育て上げるなど、その手腕が高く評価されている佐渡裕。海外では昨秋よりウィーン・トーンキュンストラー管音楽監督に就任するなど、全方位での活躍が続く。
3月には東京フィルの定期に登場、2プログラム3公演を指揮する。全公演のメイン曲はラフマニノフ「交響曲第2番」。遅れてきたロマン主義者と言われるラフマニノフは、同時代のモダンな流行に背を向けメランコリックで甘美な歌を歌い続けた。全編厚塗りのオーケストレーションによって濃厚な叙情を描く第2番は、その代表作だ。近年の佐渡には、ほとばしるパッションに加え年齢にふさわしい重厚感も徐々に加わってきた。スコアにがっぷり四つに組み、東京フィルから深々とした響きを引き出してくれるだろう。
3月6日と7日は、コンサート前半にアメリカの人気作曲家アダムズ「議長は踊る」、エマーソン「タルカス」の吉松隆編曲版が組み合わされる。とにかくリズミカルなコンビネーションで、佐渡の得意とするフィールドだから、そのノリに安心して身を委ねよう。
3月10日には、前半にラフマニノフの“白鳥の歌”、「交響的舞曲」が演奏される。3楽章で構成された30分以上の大作で、実質的な交響曲と言ってもいいだろう。この日は年に1度の佐(3月)渡(10日)の日。いつにもまして高揚した佐渡のバトンが、ロシアの郷愁でホールをいっぱいに満たしてくれるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)
第876回 オーチャード定期演奏会 3/6(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
第877回 サントリー定期シリーズ 3/7(月)19:00 サントリーホール
第100回 東京オペラシティ定期シリーズ
3/10(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
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