古典四重奏団 ショスタコーヴィチの自画像 Ⅲ

充実の傑作群で描かれる“自画像”

©F.Fujimoto
©F.Fujimoto

 高い集中力ですべて暗譜演奏、近年円熟味も増している古典四重奏団が、2014年からじっくりと進める「ショスタコーヴィチの自画像」シリーズ。全15曲の弦楽四重奏曲を毎年番号順に3曲ずつ弾き進め、丁寧に作曲者の“自画像”に迫っていく。
 全5回の折り返しとなる第3回は、全篇弱音が支配する中で終楽章の爆発が謎を呼ぶ小規模な第7番、15曲中最も著名な名品第8番、交響的かつ濃密な大作で熱狂的な終結に達する傑作第9番。合計の演奏時間は短めなものの、深い内容と聴きごたえは随一で、3曲で大きなクレッシェンドを作り上げていく理想的なセットになる。第7番と第9番はそれぞれ1番目と3番目の妻に捧げられ、間に挟まる悲劇的な第8番は「ファシズムと戦争の犠牲者の思い出に」捧げられつつも、主題は自分のイニシャル(DSCH)の音名と過去の自作の引用だらけという問題作。知的なアプローチを得意とする古典四重奏団の演奏で、そういった思索的な題材を追うのも有意義な体験になりそうだ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)

3/19(土)15:00 松明堂音楽ホール
6/22(水)19:15 近江楽堂(東京オペラシティ3F)
問:ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977
http://www.gregorio.jp/qc