すみだ平和祈念コンサート2016 ウィーン楽友協会合唱団 モーツァルト「レクイエム」

音楽の原点を思い起こさせる深い味わい


 ウィーン楽友協会合唱団が「モツレク」を引っさげて来日する。ブラームス「ドイツ・レクイエム」の初演、カラヤンやアバドら巨匠との共演など、1858年創立以来、輝かしい歴史に彩られた合唱団だ。ウィーン楽友協会の芸術監督であったブラームスは同合唱団の芸術監督兼クワイヤー・マスターでもあり、その厚みのある真摯な歌声には音楽の原点を思い起こさせるような深い味わいがある。
 すみだトリフォニーホール公演での注目は、1987年生まれの日本人指揮者・鬼原良尚(きはらよしなお)の起用だ。2006年に東京芸大付属音楽高校ピアノ科卒業後、ウィーンとグラーツで指揮とピアノを学び、現在もグラーツ在住。長らく小澤征爾のアシスタントを務め、08年の小澤征爾音楽塾コンサートの指揮者に抜擢されたり、14年に「東京カンタート第4回若い指揮者のための合唱指揮コンクール」で1位となり、披露公演を指揮するなど日本での活動履歴もあるが、実質的にはこれが凱旋デビュー公演と言って差し支えないだろう。新鋭がヴェールを脱ぐ。
 今回はオーケストラではなく、オルガン伴奏による演奏。1976年生まれのオルガン奏者ロベルト・コヴァチは、コンサート・オルガニストとして、アウグスティーナ教会やシュテファン大聖堂の教会オルガニストとして、ウィーンを代表する奏者だ。ソリストには松田奈緒美(ソプラノ)、金子美香(アルト)、大槻孝志(テノール)、河野克典(バリトン)ら実力派が集結、合唱団とともに祈りの歌を紡ぐ。「レクイエム」のほか、メンデルスゾーンやブルックナーの合唱作品も披露される。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)

2/24(水)19:00 すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
http://www.triphony.com