渡辺玲子 プロデュース レクチャーコンサート vol.6 ブラームス晩年の交流 

巨匠晩年の交流を多面的に味わう希少な夕べ

(c)Yuji Hori

 ただ聴くだけでなく、“知る”喜びも味わえるのが、Hakuju Hallの「渡辺玲子 プロデュース レクチャーコンサート」。超絶的な技巧と豊かな音楽性を持った世界的ヴァイオリニストにして、国際教養大学特任教授として長年集中講義を行っている渡辺ならではの、知的好奇心を刺激する企画だ。そのvol.6が「ブラームス晩年の交流」。グリーグのソナタ第3番、ドヴォルザークの4つのロマンティックな小品という両者の同分野の最高傑作に、クラリネットやヴィオラでお馴染みのブラームス最晩年のソナタop.120-1というプログラムは、聴くだけでも充実度満点。なかでもブラームス(作曲家自身の編曲)作品は、同版独特の繊細な哀感を享受する希少な機会となる。そして、同じ1887年に書かれたグリーグ&ドヴォルザーク作品と1894年のブラームス作品に内包されたメッセージは? 彼らの交流は? など、語りへの興味も尽きない。ピアノは名手・江口玲ゆえに態勢は万全。サロン的な空間でこれを堪能するのは贅沢な時間というほかない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年9月号より)

2021.10/29(金)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp