第141回 アンサンブル of トウキョウ 定期演奏会

個々の手腕も際立つ、ニ長調の“歓喜”

 ニ長調は明るく華やかに響く。そんな「内から勇気がみなぎる」(公演コピー)ニ長調作品だけを集めたのが、10月の「アンサンブル of トウキョウ」定期だ。同グループは、様々な形態の室内楽と小編成の管弦楽作品をレパートリーとし、メンバーは内外のコンクール入賞者や東京藝術大学教授、在京楽団の奏者等の19名で構成。現在はN響首席オーボエ奏者の青山聖樹が代表を務めている。1986年の創立以来年4回行う定期演奏会は140回を超え、海外公演も複数行うなど実績も十分だ。

 今年3回の定期は室内楽だったが今回はオーケストラ編成。指揮者なしで室内楽を拡大した精緻な楽興を奏でる。幕開けはシューベルトの初期のオペラ《ヒュドラウリスになった悪魔》D4序曲。溌剌たる佳品で、かようなレア曲を聴けるのがまず嬉しい。次いで玉井菜採がソロを弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。玉井の確かな技量は、コンサートマスターを務める紀尾井ホール室内管弦楽団でも証明されており、本人も「作品のもつ自然な至高の美しさに近づくことを目指したい。カデンツァもこれまでのクライスラーとは違うものを」と語っているので大いに楽しみだ。そして愉悦感溢れる傑作、モーツァルトの「ポストホルン」セレナーデ。芳醇な合奏は元より、木管が活躍する同曲は、青山やフリーで精力的な活動を展開している村上成美(フルート)、カメラータ・ザルツブルク首席奏者のフランク・フォルスト(ファゴット)、日本フィル・ソロトランペット奏者オッタビアーノ・クリストーフォリ(ポストホルン)ら、「各ソロにも注目してほしい」(青山)ところ。ここは明朗な名曲で元気と歓喜を取り戻そう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年9月号より)

*出演を予定していたファゴットのフランク フォルスト氏は来日が困難なため、出演を見合わせることとなりました。代わって新日本フィルハーモニー首席奏者 河村幹子氏が出演いたします。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

2021.10/28(木)19:00 紀尾井ホール
問:アンサンブル of トウキョウ事務局03-3426-2010 
https://www.ensembleoftokyo.com