【CD】モーツァルト・モメンタム1785/レイフ・オヴェ・アンスネス&マーラー・チェンバー・オーケストラ 他

 モーツァルトの創作の転機1785年に焦点をあてたアルバム(昨年のコロナ禍に録音)。アンスネスのピアノはタッチが美しく表現の彫りが深い。ピアノ協奏曲第20番では、まずオーケストラの情念を爆発させるような勢いに感服させられる。ピアノもダイナミックで雄弁だ。第21番は高貴で典雅。冒頭楽章第2主題前後や緩徐楽章がたおやかかつ繊細でとてもきれい。第22番は大編成の華麗な響きの中で、弦と管の対比、管とピアノとの絡みなど多彩な音色の変化が楽しめる。ト短調のピアノ四重奏曲は長調と短調の間を揺れ動きながら、豊かな楽想を紡いでゆく。驚くべき進化の年に改めて気づかされる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2021年8月号より)

【information】
CD『モーツァルト・モメンタム1785/レイフ・オヴェ・アンスネス&マーラー・チェンバー・オーケストラ 他

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、同第21番、同第22番、幻想曲ハ短調K.475、ピアノ四重奏曲第1番、フリーメイソンのための葬送音楽

レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ/指揮) 
マーラー・チェンバー・オーケストラ 
マシュー・トラスコット(ヴァイオリン)
ジョエル・ハンター(ヴィオラ)
フランク=ミヒャエル・グートマン(チェロ)

ソニーミュージック
SICC-30579〜80(2枚組) ¥3960(税込)