音楽堂室内オペラ・プロジェクト ブルーノ・ジネール《シャルリー 〜茶色の朝》

フランス発、衝撃のオペラ10月に日本初演!

オペラ《シャルリー 〜茶色の朝》より (C)derrière Rideau

  サンフランシスコ講和条約締結を記念して建てられた神奈川県立音楽堂の歩みは、国際社会に復帰した戦後日本の音楽史と重なる。大改修を終えて、新たにスタートさせたのが室内オペラ・プロジェクト。バロックから現代まで幅広いラインナップが魅力だが、第4弾となる《シャルリー〜茶色の朝》は現代社会に警鐘を鳴らす異色作だ。

 権力の濫用は日常の何気ないところから始まる。ある日、茶色以外のペットを飼うことが禁じられ、それはみるみるうちに厳しい取り締まりに発展していく…。

 欧州での極右勢力の台頭を受けて書かれた寓話を、ブルーノ・ジネールがソプラノと5人の奏者からなるオペラに仕立てた。ジネールは現代フランスを代表する作曲家の一人だが、ナチ時代に抑圧された作曲家の掘り起こしにも積極的だ。本作の「茶色」もナチを象徴しているのだろう。

 今回の上演はジネールの活動姿勢を伝えるべく三部構成となっており、まずはナチ時代にアメリカに亡命した作曲家パウル・デッサウの作品と、それに基づくジネールの作品が演奏される。《シャルリー》日本初演の後には、ジネールを囲み作品の背景を重層的に読み解くクロストークも予定されている。演奏はジャンル越境的な上演に積極的に取り組む「アンサンブルK」。作曲家の推薦により、ジネールともどもの来日となる。

 朗読会・絵画ワークショップ・広報インターンなど関連企画も充実。今秋の日本におけるフランス祭の中核となる企画として、地域と世界をつなぐ意欲的公演だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年7月号より)

2021.10/30(土)、10/31(日)各日15:00 神奈川県立音楽堂
問:チケットかながわ0570-015-415 
https://www.ongakudo-chamberopera.jp