2013年にシューマンの後期歌曲集のCDで高評価を得たメゾソプラノ加納悦子の「ALM」第2弾。今回選んだのはベルクが15〜23歳(1901-1908)の頃に書き上げて公表を押し留めていた知られざる歌曲31篇。有名な『7つの初期の歌』等はもちろん外して、瑞々しくも鮮烈な最初期から、シェーンベルク門下となって次第に無調への微かな予感を花開かせていく課程を編年収録でじっくり堪能できる。日本では上田敏訳『山のあなた』でお馴染みのブッセの詩による〈山々を越えて〉や、〈君よ知るや南の国〉で知られるゲーテ作〈ミニョン〉なども聴きどころ。音楽学者・今野哲也の解説も秀逸。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2021年8月号より)
【information】
CD『アルバン・ベルク 若き日の歌/加納悦子&井出德彦』
ベルク:聖なる天空、秋の想い、リンデの樹の下で、愛の歌、キバナフジの咲くところ、人間の限界、憧憬Ⅰ、影の生、遥かなる歌、愛しの美しい女、夜の歌、過ぎ去って!、夢、墓碑銘、山々を越えて、ぼくときみ、敬虔に、笛を吹く娘、逍遥、生命、酒の歌、私の両眼を閉じてください、ミニョン 他
加納悦子(メゾソプラノ)
井出德彦(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-7264 ¥3080(税込)