前奏曲の小宇宙とソナタの深遠なる世界
すでに「巨匠」の風格を持つフランスのピアニスト、ジャン=クロード・ペヌティエ。彼の放つピアノの音色は、音楽に対する深い愛情に裏打ちされており、作品が内包する歴史と文化の香りを届けてくれる。そんな彼が今年、実に斬新なプログラムを引っさげてトッパンホールに現れる。前半の核となるのは、彼の得意とするフォーレとショパンである。なんとペヌティエは、両者の前奏曲集から同じ調性、あるいは非常に近い関係にある調性のものを交互に組んで演奏するのだ。そしてさらに、20世紀のフランス人作曲家オアナの前奏曲も一つだけ、最後から2番目に置いている(意味深?!)。さまざまな表情に富む前奏曲の世界を、これまでにない形で体感できるに違いない。後半には、シューベルトが最晩年に作曲した長大なピアノ・ソナタ第21番が用意されている。前奏曲の小宇宙とソナタの深遠なる世界——ペヌティエが作りあげる豊かなコントラストを堪能したい。
文:飯田有抄
★5月9日(金)・トッパンホール Lコード:38516
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com