5月8日からの開催が予定されていた第22回別府アルゲリッチ音楽祭が、開幕目前の5月6日、会場となる東京都および大分県内における新型コロナウイルス変異株の感染拡大を受けて中止が発表された。今年はアルゲリッチが80歳の傘寿を迎えるとともに、音楽祭総監督に就任してから25年となる節目であった。4月25日に4都府県に3回目となる緊急事態宣言が発令され多くのコンサートが中止になってしまった。4月以降、観客を100%にする公演も出始めてきて、状況は徐々に快方に向かっていると感じていた矢先のことだけに緊急事態は落胆が大きかった。そのような中、アルゲリッチのような世界的音楽家の来日公演の実現に期待を抱いていただけに、中止の発表は多くの人が肩を落とした。そして先ごろ、アルゲリッチからのメッセージが、音楽祭の公式サイトに掲載された。
マルタ・アルゲリッチからのメッセージ
今回の開催中止は大変残念です。
来日するつもりで様々な準備を整えていました。
それは私だけでなく、またこの事に従事してくれたスタッフ達も、友人達も同様です。
大変ショックで残念でありますが、世界中が不透明な状況にありますので致し方ないことです。
ミッシャ・マイスキーさんには大変申し訳ないことです。
彼も来日するために準備をしていたところ、出発前日の報に大変驚き、彼もまたショックであったと思います。
音楽家は演奏できることが何よりの喜びであり、今回出演予定でした多くの若い音楽家も、また全ての音楽家も同様だと思います。
これだけの決断ですから広瀬勝貞大分県知事には重要な懸念があるのだと思いました。
これで世界が終わるわけではありません。
コロナ禍が落ち着けば再び会えます。
そのときを楽しみにしています。
公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団総裁
別府アルゲリッチ音楽祭総監督
マルタ・アルゲリッチ
公式サイトには、同音楽祭 総合プロデューサー 伊藤京子のコメントも併せて掲載されている。これまでの関係者の取り組み、アーティストやファンを思う気持ちが伝わってくるのでご一読いただきたい。
また大分県は、アルゲリッチの誕生日を祝福するとともに、県民をあげて彼女の貢献を顕彰し長く記憶にとどめていくために、誕生日である6月5日を「マルタ・アルゲリッチの日」にすると宣言した。
アルゲリッチは、熊本地震で大分県が被災した際にも音楽祭に駆けつけたり、長年にわたる音楽祭開催により地元の人や多くの子どもたちとの間に交流が生まれ、別府をふるさとのように想っているという。今回の中止は残念だが、いつかまた元気な姿とともに息を飲むような演奏を聴ける日を心待ちにしたい。
別府アルゲリッチ音楽祭
https://www.argerich-mf.jp