2021年9月の海外公演情報

Wiener Staatsoper

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ6月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

【ご注意】
 新型コロナウイルス感染の影響により、本欄に掲載した音楽祭や劇場等の公演予定について、今後、重大な変更や中止・延期等の措置が施されて実際の公演内容と異なってしまう可能性も十分あり得ます。その点をご留意いただき、最新情報は必ず各音楽祭・劇場等のウェブサイトでご確認いただきますようお願いいたします。

↓それぞれの国の情報はこちらから↓

 現在(5月3日)のところ、2021/22シーズンの詳細な公演予定を発表している劇場は「モネ劇場」や「メトロポリタン歌劇場」程度しかない。そのため、新シーズンの通常公演がフォローできないので、本号では、9月開催の音楽祭を中心に取りまとめることとさせていただいた。また、その音楽祭についても、今後、内容の変更や延期・中止等があり得ることは引き続きご留意のほどお願いしたい。

 ということで、まずは9月開催の音楽祭から。実は9月はなかなか魅力的な音楽祭が並んでいる。例えば「グラーフェネック音楽祭」、「リンツ国際ブルックナー・フェスティバル」、「ルツェルン音楽祭」、「ドヴォルザーク・プラハ国際音楽祭」、「ジョルジェ・エネスク音楽祭」など。中でも注目は「リンツ国際ブルックナー・フェスティバル」。今年はブルックナーというよりむしろマーラー関連の作品に焦点が当てられており、ブルックナー作ともマーラー作とも言われる「交響的前奏曲」やマーラーの初稿3部版の「嘆きの歌」が演奏される。それに加えて、マーラーの学友でもあったハンス・ロットの交響曲第1番(随所にマーラーそっくりの曲想が流れる)や、現行版に改訂される前のマーラーの「巨人」(5楽章のハンブルク稿)まで採り上げられる。しかも、アルゲリッチとジルベルシュテインのピアノ連弾によるブルックナーの交響曲第3番まであり、いかにも玄人好みのコンセプト色を感じさせる。

 「ルツェルン音楽祭」(9月分)では、ペトレンコ指揮ベルリン・フィルによるシューベルト「ザ・グレイト」やスークの「夏のおとぎ話」(今秋に一応来日が予定されているので、この時期の選曲は気になるところ)、クリスティ指揮レザール・フロリサンの上演するヘンデル「パルテノペ」、ラトル=ロンドン響のベートーヴェンの交響曲第6番「田園」、イワン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管によるオール・リスト・プログラムなど、これまた面白そうな演目が並ぶ。室内アンサンブル系では、ヴァイオリンのコパチンスカヤが「バイ・バイ・ベートーヴェン」と題する演出付コンサートを企画してまたまた異彩を放つ。「ドヴォルザーク・プラハ国際音楽祭」ではネトピル=チェコ・フィルとヴァイオリンのテツラフの共演、ピアノのシフの弾き振りによるチェコ・フィルの演奏会、「ジョルジェ・エネスク音楽祭」では、ゲルギエフとマリインスキー劇場管によるショスタコーヴィチ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」やストラヴィンスキー「エディプス王」といった声楽付の作品などが特に興味を引く。その他「グラーフェネック音楽祭」ではシーズン最初のウィーン・フィルの演奏会が聴けるほか、グルックの作品をフィーチャーする「グルック音楽祭」(4−5月の開催予定が9月に延期されたもの)や、ヴィオラのメンケマイヤーとヴァイオリンのイブラギモヴァという2人の異才演奏家がタッグを組んだ室内楽演奏会の並ぶ「メクレンブルク=フォアポンメルン音楽祭」、ヘレヴェッヘ=シャンゼリゼ管がストラヴィンスキーの「詩編交響曲」を採り上げる「ボン・ベートーヴェン音楽祭」など、注目音楽祭は数多い。これに予定が未発表のため言及できない「ムジークフェスト・ベルリン」、「ブレーメン音楽祭」、「ルール・トリエンナーレ」、「ユトレヒト古楽祭」、「プロムス」、「エディンバラ国際フェスティバル」(期間は8月中)などが加わるのだから、海外旅行を待ち焦がれるクラシック・ファンにはたまらない9月のヨーロッパということになろう。

 なお、9月の通常公演の中では、ピション指揮の「フィデリオ」(パリのオペラ・コミーク)、指揮のマケラとソプラノのダヴィドセンが共演するパリ管、ネルソンス指揮パイロイト音楽祭管のワーグナー・コンサート(フィラルモニー・ドゥ・パリ)、英国ロイヤル・オペラの事実上の再開公演と言える「リゴレット」(パッパーノ指揮)などが要注目公演。

(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)
(ぶらあぼ2021年6月号より)