下野竜也(指揮) 東京都交響楽団

初夏にお届けする新鮮でボリューミーな名曲選

 6月の都響プロムナードコンサートは、晴れがましい音のスペクタクルで幕を開ける。ヘンデル「王宮の花火の音楽」は、戦争の終結を祝賀する式典のために書かれた作品。野外上演を前提にトランペットをはじめとする金管楽器、ティンパニが平和の到来を告げる。この序曲をベインズ&マッケラス校訂の大編成バージョンで。

 続いてミレニアム生まれ、現在はウィーンで学ぶ大関万結の独奏で、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第2番。ブルッフのコンチェルトというと第1番が有名だが、サラサーテが初演した本作もロマン派協奏曲の魅力が満載だ。どんどん成長する年代のアーティストには、今しか聴けない表現に触れる楽しみがあるが、国内でのキャリアから翼を広げた大関が、本場で吸収しているものを見届けたい。

 そしてメイン・ディッシュはボロディンの交響曲第2番。ボロディンは医者・科学者としても活躍し、余暇に作曲したため作品数は多くないが、その音楽はロシア的な抒情性やダイナミズムを湛えている。この交響曲は力強いテーマで始まり、作曲者自身が「勇者」と呼んだと言われるが、軽快なスケルツォ、たっぷりとしたアンダンテ、賑やかで楽しいフィナーレと、シンフォニーの魅力、そしてボロディンらしさがぎっしりと詰まっている。

 名曲として知られながら、演奏機会は決して多くはない曲を組み合わせた。下野竜也の見通しのよい音楽運びが、それぞれの持ち味を引き出してくれるだろう。爽やかな休日の午後となりそうだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年6月号より)

プロムナードコンサート No.392
2021.6/19(土)14:00 サントリーホール 

5/21(金)発売
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp