イアン・ボストリッジ (テノール)〜ブリテン、ヴォルフを歌う

作曲家の心情を深くえぐり出す

(C)Ben Ealovega
(C)Ben Ealovega

 これは楽しみだ。今や彼の行くところ、必ず秀演の旋風を巻き起こしている名テノール、イアン・ボストリッジが、母国イギリスが誇るベンジャミン・ブリテンをはじめ、名歌曲の数々を歌ってくれるのだから。20世紀の音楽界に大きな足跡を残したブリテンは、わが国では管弦楽のための作品や、優秀な指揮者として知られているが、実は歌曲のジャンルにも、滋味あふれる佳品は数多い。
 今回のステージでボストリッジは、ピアノの盟友ジュリアス・ドレイクをパートナーに、「ミケランジェロの7つのソネット」と「ヘルダーリンの6つの断章」、2つの歌曲集を披露。ここに、フーゴー・ヴォルフの「ゲーテ歌曲集」からの5曲と、「メーリケ歌曲集」からの7曲を添える。いずれも紛うことなき名曲ながら、日本ではなかなか生演奏で“お耳にかかれない”作品ばかり。これらをまとめて、しかも世界を魅了する美声で味わえる好機とあっては、聴き逃せない一夜となる。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2014年4月号から)

★4月10日(木)・王子ホール Lコード:38527
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990
http://www.ojihall.jp