金聖響(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

実りと祈りを捧げる、忘れがたき終幕

(C)Eisuke Miyoshi
(C)Eisuke Miyoshi

 かくも劇的な最後があるだろうか? 来る3月、金聖響が神奈川フィルのシェフとしての最終公演を迎える。
 メインはマーラーの交響曲第6番「悲劇的」。これは様々な意味がこめられたプログラムだ。
 1998年ニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで優勝後、内外で活躍する金聖響は、2009年4月、神奈川フィルの常任指揮者に就任。意欲的な取り組みで楽団に新風を吹き込み、新たなファンを開拓した。その柱となったのがマーラー・シリーズ。10年の交響曲第3番から13年の第10番まで、8番を除く全交響曲を取り上げ、ひたむきな熱気と繊細でしなやかな情感を併せ持つ、清新な演奏を繰り広げた。ゆえに最後がマーラーなのは必然でもある。
 そして第6番にはさらに重い意味がある。シリーズで同曲が演奏されたのは、2011年3月12日。大震災の翌日だった。当日彼らは公演を中止せず、多からぬ聴衆に感動的な音楽を届けた。大災害直後の「悲劇的」…この巡り合わせに何かを感じない人はいないだろう。今回は、当日聴くことが叶わなかった人々に向けた再演奏にして、鎮魂、祈り、訴えであるに違いない。
 第6番は、緊迫の悲劇の中にも、妻アルマへの愛や一瞬の光など多様な要素を含んだ作品。従ってコンビ5年の成果を純粋に味わってもいい。だが通常とモチベーションが異なる公演だけに、特別な名演を期待せずにはおれない。20日の定期に続いて21日に相模原で最終公演が行われる。ぜひその場に立ち会いたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年2月号から)

第297回定期演奏会
★3月20日(木)・横浜みなとみらいホール
名曲シリーズ「オーケストラ名曲への招待」 (金聖響 常任指揮者 退任記念公演)
★3月21日(金・祝)・相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 
http://www.kanaphil.or.jp