小澤征爾音楽塾 特別公演リハーサルいよいよ大詰め

世界に向けてライブ配信も実施

 3月23日に特別公演を控えている小澤征爾音楽塾オーケストラ。18日からリハーサルがスタートしています。今回のプログラムは、ベートーヴェンの「エグモント」序曲&交響曲第7番とチャイコフスキー「弦楽セレナード」。音楽塾創設時から中心的な役割を担ってきた宮本文昭さんがタクトを執ります。各パートとも、講師を務めるベテランのプレイヤーに塾生OB/OGと現役の塾生が加わった編成。練習4日目となる21日、東京文化会館でのリハーサルに編集部がお邪魔しました。

 大人数での練習となるため、出演者はもちろん、プレス関係者も含め全員の抗原検査が行われる徹底ぶり。10分あまり待っていると、掲示されている紙の自分の番号のところに検査員の方が結果を書き入れてくれます。オケのメンバーからは「合格発表みたいでドキドキする」という声も。陰性( − )の印にホッとしつつ、練習の行われる楽屋へと進みます。

ヴィオラ・セクションの分奏練習(右:川本嘉子) (c) 大窪道治 / 2021 Seiji Ozawa Music Academy

 午後の時間帯は、ホールの楽屋を使用して、パートごとの分奏の時間が設けられていました。この日はヴィオラ、そしてクラリネット&ファゴットの練習風景を見学。
 ヴィオラ部屋では、講師の川本嘉子さん(水戸室内管)を筆頭に、瀧本麻衣子さん(フリー)、森口恭子さん(読響)、横溝耕一さん(N響)の3人の塾生OB/OG、そして現役の塾生2名が参加。ベートーヴェン7番の練習では、「ここのFisはもう少し低めにとると全体のハーモニーがきれいに響くはず」「ヘミオラで遅れないように」など、川本さんから細かい指示が飛びます。6人での練習ですが、ひとりずつ順に聴くほうにまわってお互いにコメントしあったり、「音量が小さくなると音のテンションも下がりがちになる」問題について議論したり。廊下から様子を覗いていたヴァイオリンの豊嶋泰嗣さんから、フレージングの持っていき方などについてアドバイスも。また、第1楽章のある部分について「ココは小澤さんがいつもすごくこだわっていた箇所」と過去の公演時のポイントが川本さんから語られる場面もあり、“小澤サウンド”が着実に次世代へと受け継がれていっている様子が窺えました。
 「弾くのに怖い部分がある」と語る塾生には、「丹田を意識して重心が上がらないように」「足の指先を動かせば、そちらに意識が行って上半身が安定する(震えない)」など、先輩方からさまざまなアドバイスが。
川本さん自身も、かつてサイトウ・キネン・オーケストラで上の世代の人たちからいろいろなことを教わったといいます。

クラリネット&ファゴットの分奏練習(左より:吉田將 山本正治) (c) 大窪道治 / 2021 Seiji Ozawa Music Academy

 一方、クラリネット&ファゴット部屋では、山本正治さん(東京藝大名誉教授)と吉田將さん(読響)が講師を務め、今回が初参加という計4名の塾生がレッスンを受けていました。「エグモント」や7番の中からのいくつかの部分をピックアップし、木管4本でのハーモニーをチェック。主な話題は、不用意なタンギングがいかに音程に影響を及ぼすか。「歌のように、音を出しながら音程を合わせていく」ことなど、音のキャラクターやアーティキュレーションに細心の注意を払うことを特に強調されていました。

宮本文昭 (c) 大窪道治 / 2021 Seiji Ozawa Music Academy

 夕方16時からおこなわれた全体練習では、宮本文昭さんが登壇。熱のこもった練習が展開されました。交響曲第7番の疾走感あふれる第3楽章のプレストは、テンポキープが大変で、宮本さん曰く「コメツキバッタみたいに数えてないと遅れる」。特に管楽器奏者にとっては息継ぎのタイミングが難しいところですが、宮本さん自身も、パッと一瞬で吸うための地道なオーボエのトレーニングを家でよくやっていたとのこと。“弦セレ”では、音から音への移り変わりなど、繊細なアーティキュレーションへの指示が多く聞かれました。印象的だったのは、「(音の移り変わりのときの微妙なニュアンスを変えることで)その音が“昨日、おとといくらいの過去”から“遠い昔”のように感じられたりする」というコメント。物理的な時間と人間が感じる時間の「錯覚」のようなものが音楽に深みを与えるということなのかもしれません。

合奏練習 管楽器の前には飛沫防止アクリルパネルが置かれている (c) 大窪道治 / 2021 Seiji Ozawa Music Academy

 本公演は、明日23日(火)19時から。日本を代表する演奏家からフレッシュな学生たちまで、幅広い年代のメンバーが、緻密なリハーサルを経て聴かせてくれるステージに期待が高まります。公演チケットはすでに完売ですが、国内外に向けて行われるライブ配信(アーカイブ配信もあり)でも楽しむことができます。

休憩中の談笑のなかにも貴重なアドバイスが! (c) 大窪道治 / 2021 Seiji Ozawa Music Academy

取材協力:ヴェローザ・ジャパン

【Information】

小澤征爾音楽塾 特別公演 2021
2021.3/23(火)19:00 東京文化会館 大ホール

[プログラム]
ベートーヴェン:「エグモント」序曲 作品84
チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調 作品48
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92

音楽監督:小澤征爾
指揮:宮本文昭
管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ

問:ヴェローザ・ジャパン03-6411-5445
https://ozawa-musicacademy.com/program/

【ライブ配信チケット】※会場チケットは完売
★国内ライブ配信 1,000円(Tigetシステム利用料含む、消費税込)
https://tiget.net/tours/ongakujuku
※見逃し配信あり。視聴可能期間:3/25(木)正午12時~3/31(水)24時
※視聴券はTigetにて3/31(水)22時まで購入可能
★海外ライブ配信 8EURO
https://idag.io/IDAGIO_SeijiOzawaMusicAcademy