東京藝大で学び、2015年の東京国際音楽コンクール〈指揮〉で2位を獲得した1994年生まれの俊英、太田弦のデビュー盤。帰国が叶わぬ上岡敏之に代わって振ったこの大曲で、彼はエネルギーに溢れた音楽を展開している。全体にテンポは速め。第1楽章の序奏からキビキビと運び、主部も力強くグングンと進む。遅い第2楽章も同様で、伸びやかにして力感を失わない。第3楽章はトリオを含めて実に歯切れ良く、第4楽章も快活に突き進む。メンデルスゾーンの「イタリア」のような“溌剌とした古典的交響曲”の趣を感じさせる、若きマエストロの瑞々しい記録。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年4月号より)
【information】
SACD『シューベルト:交響曲第8番「ザ・グレイト」/太田弦&新日本フィル』
シューベルト:交響曲第8番「ザ・グレイト」
太田弦(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
収録:2020年7月、すみだトリフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00742 ¥3200+税