【SACD】ジョーカー/菊本和昭&佐竹裕介

 N響首席トランペット奏者の菊本和昭による10年ぶりのソロ・アルバムは「ドイツから東方への旅」というテーマで、ドイツから日本の5ヵ国の作曲家が並ぶ。地理ばかりか時代も200年にわたる作品群が絶妙に配列され、刺激的で楽しい。通して体感することで、時代や様式を問わず、この楽器に託されてきた「歌心」に通底するものも伝わる。そういった発見も、菊本の温もりと透明感のある音色、安定した名技があってこそ。武満徹の透徹した歌、ペンデレツキの技巧、ニヤリとさせられるクチェラの表題作、ネスラーの19世紀メルヘン・オペラの旋律美など、どの曲も変化に富んで印象に残る。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年4月号より)

【information】
SACD『ジョーカー/菊本和昭&佐竹裕介』

ヘーネ:スラヴ幻想曲/武満徹:径(みち)/ペンデレツキ(ルートヴィヒ編):トランペット小協奏曲/ヴェベル(タール編):変奏曲 ヘ長調/ヒダシュ:幻想曲/クチェラ:
ザ・ジョーカー/ネスラー(タール編):歌劇
《ゼッキンゲンのトランペット吹き》より〈若きヴェルナーの別れのアリア〉

菊本和昭(トランペット)
佐竹裕介(ピアノ)

オクタヴィア・レコード
OVCC-00161 ¥3200+税