オーケストラの生演奏で体感するチャップリンの名作

新日本フィルの生オケ・シネマ vol.5
チャップリン『街の灯』

City Lights © Roy Export S.A.S

 映画を見るならコンサートホールで! そう思わせてくれるのが「生オケ・シネマ」だ。コンサートホールの優れたアコースティックサウンド、舞台に設置された大きなスクリーンでの上映、そして映像と生のオーケストラ演奏のシンクロは、通常の映画鑑賞体験を超えるものだ。

 すみだトリフォニーホールで開催される「生オケ・シネマ」は今回で5回目。そして、その5回の中でも特に話題となったチャップリンの傑作『街の灯』が再び上演される。前回の上演を観たが、改めてチャップリンというアーティストの才能の大きさを感じることができた。映画『街の灯』の公開は1931年だが、その撮影には3年もの歳月をかけたと言われており、映像の細部までチャップリンのこだわりがある。それがはっきりとわかるのが大スクリーンの良いところ。完璧主義者と言われるだけあって、ひとつの笑いを取るシーンでも、あらゆる動きのタイミングが計算され尽くしている。それはデジタル修復された映像を大スクリーンで観なければ発見できなかったことだ。

 この映画はサイレントだが、1931年と言えばすでに「トーキー」が発明され、音声付きの映画が公開された時期でもあった。しかしチャップリンはトーキーには見向きもせず、サイレントの表現手法を磨き上げ、同時にその映像に合わせた音楽も自身で担当し、細部まで手を入れたと伝わる。そのスコアを元に、生のオーケストラがチャップリンの意図を再現する。これまでの上映やテレビ放送ではわからなかった本来の音楽が聞こえるだろう。

新日本フィルハーモニー交響楽団

 指揮者・竹本泰蔵は映像作品とのシンクロ演奏を熟知しており、オーケストラはすみだトリフォニーホールを本拠地とする新日本フィルハーモニー交響楽団、この「生オケ・シネマ」を支える大事な柱となっているので期待が高まる。

 映画についての詳しい説明はいらないだろう。チャップリンの最高傑作『街の灯』のライブでの体験は、この新型コロナウイルス流行の時代に生きる私たちに新たな勇気を与えてくれるはずだ。
文:片桐卓也

City Lights © Roy Export S.A.S

【Information】
2021.3/17(水)18:15 すみだトリフォニーホール

竹本泰蔵(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団

問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
https://www.triphony.com
問:プランクトン03-6273-9307
http://www.plankton.co.jp/citylights2020/