国際共同制作 日本初演・新制作 オペラ《Only the Sound Remains -余韻-》

「能」から生まれたサーリアホの美しきオペラ日本初演


室内楽からオーケストラ、オペラまで幅広いジャンルで斬新な世界を開示してきたフィンランドの作曲家カイヤ・サーリアホ。6月6日に東京文化会館で、彼女の話題のオペラ《Only the Sound Remains》の日本初演が行われる。

2016年に世界初演された同オペラは、緻密で洗練された音響が描き出す幽玄な世界によって、高い評価を受けた作品。オペラは2部からなり、それぞれ能の「経正」と「羽衣」にもとづく英語台本が使われている。第1部は、詩歌管絃に秀でた平経正をめぐる物語。幼少期に仁和寺で過ごした経正の死後、その死を悼む仁和寺の僧侶の行慶が、管絃講を執り行うと、経正の亡魂が現れる…。第2部は現在の静岡の三保松原が舞台。春のある日、漁師・白龍は美しい衣を拾う。衣なくては天界へ帰れないと涙する天女に同情した白龍は、天女の舞楽を披露してくれれば、衣を返すと約束するのだった。

今回は、ヴェネツィア・ビエンナーレほかとの国際共同制作によるニュープロダクションで、新進気鋭の演出家アレクシ・バリエールを起用。さらにコンテンポラリー・ダンス界の鬼才、森山開次が振付・ダンスを担当するのも楽しみである。経正・天女役は、カウンターテナーのミハウ・スワヴェツキ、行慶・白龍役には、バスバリトンのブライアン・マリーが出演する。サーリアホの世界に通じた万全の陣容で臨むが、古典はもちろん現代作品も得意なヴァイオリンの成田達輝ほか、邦人演奏家たちも集結し、日本初演をもり立てる予定だ。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2021年3月号より)

2021.6/6(日)15:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp