コンマスから指揮者への華麗なる転身
現在の20代から30代の若手指揮者は世界的にみても台頭めざましく、ドゥダメルやネルソンスを筆頭として厚い層を形作っている。しかしヴァイオリニスト出身のガエタノ・デスピノーサは毛色が違う。若手の中にも他の楽器からの転向組はいるし、ヴァイオリニスト出身の指揮者も少なくないが、彼の場合、ドイツ音楽の伝統が息づく街、ドレスデン州立歌劇場のコンマスを5年間きっちりと務めあげた上での指揮者転向、しかも1978年生まれだからまだ30代半ばという若さなのだ。ヴァイオリンの師匠は自在な弓さばきで知られるサルヴァトーレ・アッカルド、指揮の師はオーケストラを極彩色に鳴らすファビオ・ルイジ。これらの出自が音楽にどのような色合いをもたらすのか、想像するだに興味深い。
そのデスピノーサが2月の都響のプロムナード・コンサートに登場する。スタンダードな選曲が基本のシリーズだけに、指揮者の力量がはっきりと出そうだ。まず前半はブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」から。変奏曲の名手ブラームスはこの曲で主題の可能性を徹底して引き出している上に、オーケストレーションも華麗。続くハイドン「協奏交響曲」では、ケルン放送響のコンマスまで務めた現都響ソロ・コンマスの四方恭子をはじめ、都響が誇る精鋭奏者たちが妙技を繰り広げる。そして後半はベートーヴェンの「運命」。がっちり作り込まれたドイツの王道交響作品がラインナップされているようだが、「協奏交響曲」あたりでイタリア風合奏協奏曲のテイストも顔を出すかもしれない。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年1月号から)
プロムナードコンサート No.357
★2014年2月8日(土)・サントリーホール Lコード:36791
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp