ヴォルフ=ディーター・ハウシルト(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団

真の巨匠芸がもたらす本道の響き

(C)K.Miura
(C)K.Miura

 中低音が充実した、ふくよかにして確固たる響きで、滋味溢れる音楽が悠然と運ばれる。それは自然体でいながらコクがあり、聴く者に無類の充足感を与えてくれる…こうした今では貴重なブルックナー演奏を味わえるのが、巨匠ヴォルフ=ディーター・ハウシルト指揮する新日本フィルの公演だ。
 新年1月、ハウシルトは同楽団の定期に登場し、シューベルト&ブルックナーの交響曲第4番を振る。1937年旧東ドイツ生まれの彼は、ライプツィヒ放送響をはじめドイツ各地の楽団のシェフを歴任し、ベルリンやエッセンなど歌劇場での実績も豊富な名指揮者。独襖王道ものはとりわけ高い評価を得ている。新日本フィルには、2002年に朝比奈隆の代役で振ったブルックナーの交響曲第5番で多くの聴衆に感銘を与えて以来、たびたび客演。懐の深い音楽は、オーケストラと聴衆の双方から支持を集め、共演を心待ちにしている楽団員も多いという。2012年の500回記念定期を病気でキャンセルして心配させたが、2013年の「亡きボッセの想い出に」捧げる公演で復活して会場を沸かせ、待望の再登場と相成った。
 今回の第4番は、第5、7、8、9番に次ぐ、同コンビ5曲目のブルックナー。曲調からメリハリ型の演奏も多い中、前記のような、スケールが大きく且つ味わい深い「ロマンティック」を聴かせてくれるのは間違いない。前半のシューベルトも、彼の交響曲の中で最も重厚な「悲劇的」だけに要注目。前回来日時の「グレイト」の名演からも期待は大きい。「オーケストラの音を変える」とも称されるハウシルト。その円熟の至芸を聴き逃してはならない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2014年1月号から)

第519回定期演奏会 トリフォニー・シリーズ
★2014年1月24日(金)、25日(土)・すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp