バロックヴァイオリンの名手である一方、モダン楽器も弾きこなし、オランダ・バッハ協会の芸術監督としても活躍する佐藤俊介。2012年に限定リリースされたテレマンの無伴奏作品『12のファンタジー』の録音が、熱い要望を受けて再プレスされた。1735年以降に出版された同作は、バッハの一連の無伴奏作品に比べ、楽譜の上ではシンプル。しかし、書き込まれていない分、“行間”の和声感やフレーズの流れを的確に捉えなければ、音楽として成立し得ない難しさを孕む。佐藤は少し速めのテンポ設定で推進力を保つと同時に、彫りの深い表現と自然な収縮で、佳品へ瑞々しい生命を宿らせている。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2021年2月号より)
【information】
CD『テレマン:12のファンタジー/佐藤俊介』
テレマン:12のファンタジー(無伴奏ヴァイオリンのための12の幻想曲)
佐藤俊介(ヴァイオリン)
ナミ・レコード
WWCC-7936 ¥2700+税