60年以上にわたりチェロ界、さらには楽壇の第一線で活躍してきた堤剛。今や世界的なレパートリーとなった黛敏郎「BUNRAKU」(本盤所収)をはじめ、邦人作品も数限りなく手がけている。そして今回、戦後の大作曲家たちとのコラボレーションの軌跡をたどる演奏が、ディスクとなって私たちに届けられた。どっしりと構えたところから正確なテクニックで核心へと切り込んでいくダイナミズムは堤の独壇場。スケールの大きな楽曲把握によって、各曲が宇宙的な広がりのもとに描き出される。歴史的ドキュメントと言うにとどまらず、精力的な活動は今なお倦むところを知らない。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年2月号より)
【information】
CD『肖像/堤剛&土田英介』
松村禎三:肖像/湯浅譲二:内触覚的宇宙Ⅳ/一柳慧:コズミック・ハーモニー、限りなき湧水(ピアノ独奏)/武満徹:オリオン/三善晃:C6H/細川俊夫:線Ⅱ/新実徳英:横豎/黛敏郎:BUNRAKU
堤剛(チェロ)
土田英介(ピアノ)
マイスター・ミュージック
MM-4084-85(2枚組) ¥4000+税