近藤伸子 ベートーヴェンシリーズⅢ 《熱情》&ピアノトリオの最高傑作《大公》

ソナタと室内楽の名曲で作曲家像に迫る

 新ウィーン楽派やシュトックハウゼン作品、あるいはバッハの演奏に触れれば分かるように、近藤伸子の見据える射程は実に広く、その演奏はオーソドックスさと先鋭さを兼備したもの。その近藤が2019年から開始したシリーズは生誕250年である2020年を意識したであろう「Kondo Nobuko Plays Beethoven」である。今まで2回開催された同シリーズ、昨年には「ハンマークラヴィーア」やピアノ三重奏曲第1番他(第1回)、「悲愴」やチェロ・ソナタ第3番他(第2回)が披露された。ピアノ・ソナタ+共演者を招いての室内楽曲という組み合わせは作曲家がそれぞれにおいてどのようにピアノを扱っているのかという興味を喚起するし、何より変化があって良い。今回の第3回目もこれを踏襲し、ピアノ・ソナタでは「熱情」をメインとし(他に第5番及び第6番)、後半にはピアノ三重奏曲第7番「大公」が披露される。共演は佐藤まどか(ヴァイオリン)と河野文昭(チェロ)。名曲を名演奏で聴く歓びが確実に約束された一夜となろう。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年11月号より)

2020.11/2(月)19:00 東京文化会館(小)
問:東京コンサーツ03-3200-9755
http://www.tokyo-concerts.co.jp