歴史的鍵盤楽器の名匠・渡邊順生が、実力派の古楽アンサンブルと臨んだ、大バッハのチェンバロ協奏曲全集の第1集。堅固な構築美と艶やかな歌心を両立する一方、気鋭のソリストたちと“競演”する、複数楽器のための協奏曲では、饒舌かつしなやかな会話を楽しむ雰囲気も。バックの面々も、渡邊の音楽創りの意図を丹念に掬い取ってゆく。また、通奏低音の鍵盤楽器には、金属線の代わりにガット弦が張られたチェンバロ=ラウテンクラヴィーアを使用。バッハの遺品目録にも記載されている楽器で、リュートに似た柔らかな音色が、ソロ声部との理想的なバランスを生み出す。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2020年11月号より)
【information】
CD『J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲全集 Vol.1/渡邊順生&The Baroque Band』
J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲第1番・第6番・第2番・第5番、2台のチェンバロのための協奏曲第2番、3台のチェンバロのための協奏曲第1番・第2番、フルート ヴァイオリン チェンバロのための三重協奏曲イ短調
渡邊順生 渡邊孝 崎川晶子 鴨川華子(以上チェンバロ)
The Baroque Band
コジマ録音
ALCD-1197,1198(2枚組) ¥3400+税