今回も藤倉大の倦むことを知らない能産性に圧倒させられた。フル編成の管弦楽曲、協奏曲を含む全6曲。アイディア満載の楽曲が収録可能時間いっぱいに繰り広げられる。藤倉は各奏者との緊密なコラボを通じて聴き手の身体性を喚起するユニークな表現領域を開拓してきたが、ブックレットの対談を読み、録音の編集作業まで自分でこなしていることを知って、二度驚いた。彼にとっては生の音をスピーカーで鳴り響く形にもっていくまでが作曲なのだろう。最後の曲「Umi」に、この人の個性は元来ロマンティックな歌にあるのだろうと改めて感じた。その傾向は近年、ますます強まっているように思う。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年11月号より)
【information】
CD『藤倉大:タートル・トーテム』
藤倉大:THREE、ホルン協奏曲第2番(アンサンブル・ヴァージョン)、Obi(帯)、タートル・トーテム、Umi(海) 他
福川伸陽(ホルン) 佐藤紀雄(指揮) アンサンブル・ノマド 東野珠実(笙) 佐藤洋嗣(コントラバス) 吉田誠(クラリネット) アントニ・ヴィット(指揮) 名古屋フィルハーモニー交響楽団 他
収録:2019年9月、東京芸術劇場コンサートホール(ライブ) 他
ソニー ミュージック
SICX-10008 ¥3000+税