桐朋学園で学び、2017年から読響の奏者を務める川口尭史のデビュー・アルバム。すべての音やフレーズがこまやかに吟味・彫琢されながら、表情豊かで濃密な演奏が展開されており、ブラームスの重厚な魅力を堪能させられる。川口の豊麗な音と濃厚な表現に加えて、世界の舞台での経験豊富な橋本京子の雄弁かつ精妙なピアノの貢献(川口への触発も見逃せない)も大。なかでも、繊細に始まってエモーショナルな高揚を遂げる第3番のパッショネイトな演奏には、終始惹きつけられる。数あるブラームスのヴァイオリン・ソナタ集の中でも充実度の高い、お薦めの1枚。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年11月号より)
【information】
CD『ブラームス:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ/川口尭史&橋本京子』
ブラームス:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番~第3番
川口尭史(ヴァイオリン)
橋本京子(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7931 ¥2500+税