波多野睦美(メゾソプラノ) 歌曲の変容シリーズ 第14回 終わりなき歌〜カルテットと声の戯れ〜

弦の音色と共鳴し合いながら、ステージを包み込む美しき旋律

C)HAL KUZUYA
 メゾソプラノの波多野睦美が2005年から王子ホールで継続中の「歌曲の変容シリーズ」。ルネサンスから現代に至るまでの歌曲を独自の視点でプログラムを構成、多彩な共演者とともにその魅力を再発見してきた。14回目となる今年は、「カルテットと声の戯れ」と題して、弦楽器と声楽の数々の出会いで魅了する。

 弦楽四重奏とピアノの伴奏による歌曲といえば、フランスの作曲家ショーソンの、去っていった恋人に想いを寄せる〈終わりなき歌〉が有名だが、英国近代のヴォーン=ウィリアムズ「ウェンロックの断崖で」やガーニー「ラドロウとテイム」も同様の伴奏の歌曲集。フィンジも、弦楽四重奏が伴奏の歌曲集「小道や柵の脇を」を残した。これら独特の質感をもつ英国の歌曲は、ロンドンのトリニティ音楽大学で学んだ波多野の得意とするところ。彼女の明晰な発音と温かな声の響きは、弦楽器の音色と美しく溶け合うだろう。

 また、ブラームスの死後に発見された歌曲集「オフィーリアの5つの歌」が、歌劇《リア》で知られる現代ドイツの作曲家アリベルト・ライマン編曲版(弦楽四重奏の伴奏)というのも興味深い。実演に触れる貴重な機会だ。

 共演は、草冬香(ピアノ)、滝千春、直江智沙子(以上ヴァイオリン)、大島亮(ヴィオラ)、門脇大樹(チェロ)の中堅・若手の名手たち。ブラームス「弦楽四重奏曲第2番」第1楽章などもあり、歌詞はないが、心に迫るドラマを作り出す。深まる秋に味わいたい、本格派のコンサートだ。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2020年11月号より)

2020.11/27(金)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp