いまが“旬”のデュオに期待
近年、漆原啓子と練木繁夫がデュオを組み、素晴らしい成果をあげている。2人は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタに取り組み、2009年から11年にかけて全曲録音を行っただけでなく、12年3月には、《東京・春・音楽祭》において、1日でベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲を演奏した。その日の演奏は、まさに2人の音楽的な充実ぶりを伝えるものであった。特に、漆原のヴァイオリンには、若い頃から培った技量に音楽表現の幅や深さを加え、気品すら感じられた。1981年にヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝し、早くから注目されてきたが、経験を積んだ今こそが彼女を聴くべきときだと思われる。
2014年1月のデュオ・リサイタルでは、2人が手掛けてきたベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタから第5番「春」と第7番が演奏される。漆原はよく考えられたヴィブラートで多彩な音色を披露することだろう。リサイタルの後半はフランス音楽で、フランクのヴァイオリン・ソナタ、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。フランクでは、2人のベートーヴェン演奏からの進化型が聴けるだろう。オーケストラの音をイメージするという練木のピアノも楽しみ。「序奏とロンド・カプリチオーソ」や「ツィゴイネルワイゼン」では、漆原のヴィルトゥオジティが満喫できるに違いない。
文:山田治生
(ぶらあぼ2013年10月号から)
アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2013/14後期
★2014年1月25日(土)・東京オペラシティ コンサートホール Lコード:38980
問 ジャパン・アーツぴあ 03-5774-3040
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