
右:彌勒忠史
2021年4月から東京交響楽団の正指揮者を務めてきた原田慶太楼は、『こども定期演奏会』の「新曲チャレンジ・プロジェクト」や、川崎市の特別支援学校の生徒たちと作り上げた「かわさき組曲」を成功に導くなど、音楽監督のジョナサン・ノットとは異なる角度からオーケストラに多様性をもたらし、楽団の発展に貢献してきた。東響正指揮者としての最後の公演のひとつ、第738回定期演奏会(3/28 サントリーホール)では、両者の5年間の集大成にふさわしい、原田こだわりのプログラムが披露される。
前半には、テキストの深い読み込みに定評のあるカウンターテナーの彌勒忠史と、お馴染み東響コーラスを迎えて、コープランドの「アメリカの古い歌」第1集とバーンスタインの「チチェスター詩篇」が演奏される。原田にとって、第2の故郷というべきアメリカの音楽はなにより大切なものであり、20世紀のアメリカを代表するふたりの巨人、コープランドとバーンスタインの作品は、たびたび取り上げてその魅力を発信してきた。とりわけ平和への想いが込められた「チチェスター詩篇」は、世界が混沌とする現代への力強いメッセージとなるだろう。
後半に演奏されるのはショスタコーヴィチの交響曲第5番。テミルカーノフやビシュコフらロシアの名指揮者たちを敬愛する原田にとって、ロシア音楽はアメリカ音楽と並ぶ中核的レパートリーである。なかでもショスタコーヴィチの交響曲は、正指揮者就任披露演奏会でも指揮した、原田の十八番だ。作曲家がブリリアントなサウンドの背後に隠した人類への警鐘に、原田の鮮やかなタクトでじっくりと向き合いたい。
文:八木宏之
(ぶらあぼ2026年2月号より)
原田慶太楼(指揮) 東京交響楽団 第738回 定期演奏会
2026.3/28(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp
他公演
2026.3/29(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール(025-224-5521)

八木宏之 Hiroyuki Yagi
青山学院大学文学部史学科芸術史コース卒。愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士前期課程(修士:音楽学)およびソルボンヌ大学音楽専門職修士課程(Master 2 Professionnel Médiation de la Musique)修了。
2021年春にWebメディア『FREUDE』を立ち上げ。クラシック音楽を中心にプログラムノートやライナーノーツ、レビュー、エッセイを多数執筆するほか、アーティストへのインタビュー、コンサートのプレトーク、講演会なども積極的に行なっている。
https://freudemedia.com

