ミュンヘン・フィルの青木尚佳がメンデルスゾーンの協奏曲で沖澤のどか&京響と初共演

©井村重人

 若い音楽家への支援などを通じてクラシック音楽界に積極的に関わり続けているローム ミュージック ファンデーション。春恒例の「ローム ミュージック フェスティバル」(京都)に、ミュンヘン・フィルのコンサートマスター、青木尚佳が登場、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を弾く。指揮の沖澤のどか、京都市交響楽団とはともに初共演。

 「どこを切り取っても歌心にあふれている作品です。私が感じている、その“歌”を、ぜひ聴いていただけたらと思います。

 ただ、何度練習しても正解がわからないくらい難しいです。もう出だしから心が折れます(笑)。でもそれが魅力でもありますね。私自身も、昔ほど“完璧に弾く”ことを目指さなくなりました。少しくらい失敗しても世界が終わるわけではない、みたいな(笑)。もっとトータルで、ひとつの音楽、ひとつのストーリーとして曲を捉えられるようになってきたと思います」

 青木もロームの奨学金を得て、2011年、19歳で英国王立音楽大学に留学した。

 「海外に出るんだろうという気持ちは、なんとなくずっと自分の中にありました。初めての海外生活。女子寮に入ったのですが、英語も十分には話せず、寂しかったです。向かいの部屋にいたドイツ人のチェロの女の子と励まし合っていました。その友情は今でも続いています。

 生活費がとても高かったので、ロームさんの奨学金は本当にありがたかったです。留学前から通い始めたドイツのアナ・チュマチェンコ先生のマスタークラスにも何度も行くことができました」

 在学中の2014年、ロン=ティボー=クレスパン国際コンクールで第2位。英国王立音楽院を経てミュンヘン音楽大学に留学し、21年にはミュンヘン・フィルのコンマスに就任した。1893年創立の名門オーケストラで初の女性コンサートマスターだった。

 「最初はアシスタントコンサートマスターの枠に応募したのですが、先にコンサートマスターのオーディションがあったので、顔を覚えておいてもらうだけでもいいかなと受けてみたら、なんと合格。びっくりしました」

 正式採用までには14ヵ月の試用期間があった。

 「あの14ヵ月はチャレンジの連続でした。コロナ禍で、隣と距離を置いて演奏しなければならなかったので音のバランスが通常と違いましたし、フレーズの捉え方や音を出すタイミングなど、オーケストラの伝統的なものも、私にはすべて初めての体験です。でもそれが自分の音の出し方を見直す機会にもなって、あの経験のおかげでとても成長できたと思います。周囲の団員たちもみんな、言うことは言うけれども、それができたら、今日の公演はすごく良かったよとか、思ったことを本当に素直に言葉にしてくれる人たちで。大変でしたが、ものすごく濃い14ヵ月でした」

 幾重もの経験を積み重ねてきた青木が奏でるメンデルスゾーンが、彼女自身の歩みと静かに重なり合い、豊かな歌として響く。

取材・文:宮本 明

(ぶらあぼ2026年2月号より)

ローム ミュージック フェスティバル2026
2026.4/18(土)、4/19(日) ロームシアター京都
【青木尚佳 出演公演】
オーケストラ コンサート
10thアニバーサリー・プログラム with 沖澤のどか

2026.4/19(日)16:00 ロームシアター京都 メインホール
問:otonowa 075-252-8255 
https://www.rmf.or.jp/jp/activity/rmfes/
※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトをご確認ください。