安田謙一郎 & 藤村俊介(チェロ・クァルテットK)

名手たちの個性が輝く、チェロ四重奏アルバム

 伝説的なチェリストであるカサドやフルニエに師事し、国内外で活躍を続けるチェリストの安田謙一郎。彼を中心に、その門下生であり、現在NHK交響楽団のフォアシュピーラーの藤村俊介、同楽団の首席を33年務め、現在はソリストとして活躍する木越洋、そして同楽団の注目の若手である宮坂拡志。日本のチェロの名手たちが集い、「チェロ・クァルテットK」を結成、初のディスクをリリースした。今回は安田と藤村に、結成の理由やディスクの内容などについて話を聞いた。

藤村「レーベルから、安田先生を中心にしたチェロ・クァルテットのアルバムをレコーディングすると面白いのではないか、というお話をいただいたのがきっかけです。そこで、私がメンバーを集めました。いままでにないアンサンブルの形になったと思います。安田先生と木越先生がかなり勢いのある演奏をされるので(笑)、それに宮坂さんと必死に食らいつきながらアンサンブルを作っていきました」

 確かに聴いていると、それぞれの奏者の個性が輝いている。だからこそ、チェリスト4人以上の存在感や音圧、輝きを感じることができる演奏になっている。

安田「チェリスト4人の演奏なので、スリリング…と思うかもしれませんが、普通の弦楽四重奏であればこういうアンサンブルは普通だと思いますよ。それぞれがやりたいことを出し合うからこそ生まれるものがありますよね。そして、木越さんが一番下のパートを弾いてくださったのがとても良かったと思います。オーケストラや室内アンサンブルの際にはコントラバス奏者がいて、私たちチェロ奏者は彼らの奏でる音にのっていくのですが、今回は木越さんが素晴らしいベースを作り出してくれたのがとてもやりやすくて」

 プログラムは、バッハの「G線上のアリア」に、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」などが並ぶ、一見名曲集のようにも思えるが、ヴァルガの編曲によるバッハの「シャコンヌ」にくわえ、演奏・録音ともに稀少な、チャイコフスキーと同世代の作曲家、クズネツォフの「組曲」が収録されている。

藤村「クズネツォフは安田先生が提案してくださいました。これまで様々なチェロ・クァルテットのための作品を演奏してきましたが、この曲は知りませんでした。旋律的ですし、和声も美しい魅力的な作品です」

安田「せっかくチェロ・クァルテットのアルバムを出すので、この編成のための珍しい作品を皆様にお聴きいただきたかったのです」

 名曲や録音が稀少な作品を、チェロ奏者4人の創り出す、華麗な演奏と奥行きのある響きでぜひ楽しんでほしい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2020年10月号より)

CHACONNE by Cello Quartet K
2020.11/3(火・祝)14:00
横浜市港南区民文化センター ひまわりの郷 ホール
問:celloadagios@gmail.com(山崎)

CD『シャコンヌ』
マイスター・ミュージック
MM-4081
¥3000+税
2020.9/25(金)発売