沼尻竜典(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ダイナミックな管弦楽サウンドを浴びる喜びをかみしめる

 東京シティ・フィルの第337回定期演奏会を指揮するのは、びわ湖ホールでの《神々の黄昏》無観客公演のライヴ・ストリーミング配信が記憶に新しい沼尻竜典。東京シティ・フィルの定期演奏会には今回が初登場となる。

 プログラムには芥川也寸志とラフマニノフの作品が並べられた。芥川の「交響管弦楽のための音楽」は1950年のNHK放送25周年記念懸賞作品として特賞を受賞した作曲者の出世作。55年に来日したシンフォニー・オブ・ジ・エアーとNHK交響楽団により後楽園球場で演奏されたことでも知られている。明快で力強い作風を持ち、当時のソ連の音楽からの影響もうかがわせる。

 ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番では、86年モスクワ生まれのアンドレイ・コロベイニコフが独奏を務める。早くから『ラ・フォル・ジュルネ』の常連ピアニストとして来日を重ねている実力者だ。聴く人をぐっと作品世界へ引き込むような没入度の高い演奏を披露してくれることだろう。

 そしてメイン・プログラムは同じくラフマニノフの交響的舞曲。ロシアを離れ、アメリカへと渡った作曲者が生涯の最後に書き上げた大作だ。サクソフォンや多数の打楽器を含むオーケストラがダイナミックできらびやかなサウンドを作り出す。大編成のオーケストラを聴く機会を長く待ち望んでいた方も多いことだろう。胸のすくようなラフマニノフを期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2020年8月号より)

第337回 定期演奏会
2020.10/16(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp