【SACD】バッハ:ゴルトベルク変奏曲/ラン・ラン

 20年以上にわたる探求やピリオド楽器奏者のシュタイアーとの意見交換などを経ながら、満を持して録音された人気奏者の人気作。90分強の演奏時間が示す通り、ラン・ランは1音1フレーズにニュアンスを込めて、じっくりと―特に遅い変奏は長大なモノローグの如く―曲を運ぶ。だが音楽は絶えず流動し、音色と表情の多様性やリピート時のこまやかな変化も相まって、終始耳を惹きつける。良き例を挙げれば孤独で侘しい13変奏と力感十分に躍動する14変奏の対照性。そして最後のアリアはまるでバッハの墓に溶け込むかのようだ。バロック奏法も踏まえたモダン楽器ならではの超快演!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年10月号より)

【information】
SACD『バッハ:ゴルトベルク変奏曲/ラン・ラン』

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲

ラン・ラン(ピアノ)

収録(限定盤):2020年3月、ライプツィヒ(ライブ)
ユニバーサル ミュージック
UCCG-40110/3(限定盤・4枚組) ¥5400+税
UCCG-1876/7(スタンダード盤・2枚組) ¥3200+税