18世紀の音楽の国際感覚がヴィヴィッドに伝わってくる一枚だ。J.S.バッハはドイツ国内にあってイタリアやフランスの流行を輸入し、自分なりに解釈した。いくら巧みでも舞曲のステップに滲み出てしまうドイツ的な重々しさ。一方、イタリアで学びイギリスで活躍した息子のJ.C.バッハは、明るく軽やかで、エレガント。どんな人にも訴求する真の国際人だ。そして神童モーツァルトが登場する。当時最新の大型チェンバロを姉とともに縦横無尽に弾きこなしたこのはじける才能は、どんな円熟を迎えるのだろうか。作曲家の個性を映し出した選曲、そのきっちりとした演じ分けに武久のストーリーテラーの才を感じた。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年9月号より)
【information】
CD『鍵盤音楽の領域vol.10 バッハからモーツァルトへ/武久源造&山川節子』
J.S.バッハ:イタリア協奏曲、フランス風序曲/J.C.バッハ:ソナタ ニ長調 op.5-2/モーツァルト:四手のためのソナタ K.19d、アンダンテと変奏曲
武久源造 山川節子(以上チェンバロ)
コジマ録音
ALCD-1194 ¥2800+税