【CD】献呈/新納洋介

 東京藝術大学を卒業後、パリで研鑽を積んだ新納は、作品の輪郭を確実に描き出す確かな技術と美しい音色をもつピアニストである。これまでにブラームスやシューベルトなど多彩なプログラムで2つのディスクをリリースしてきたが、今回彼が選んだのはラフマニノフとショパンを核とした内容である。高度な技術はもちろんだが、歌心に音色の多彩さ、そして即興的な音楽運びなど、演奏者に対し、深く、それでいて自由な音楽性を要求する作品ばかりだ。新納はそれらを自在にクリアしているが、特にラフマニノフでの重厚さと繊細さのバランス感覚が見事である。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2020年7月号より)

【information】
CD『献呈/新納洋介』

クライスラー(ラフマニノフ編):愛の喜び、愛の悲しみ/ラフマニノフ:「10の前奏曲」よりⅠ〜Ⅵ/シューマン(リスト編):献呈/ショパン:即興曲第1番〜第4番「幻想即興曲」/グルック(ズガンバーティ編):メロディー

新納洋介(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-9209 ¥2800+税