上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

上岡敏之
C)堀田力丸

 上岡敏之が新日本フィルの音楽監督として迎える最後のシーズン(2020年9月〜21年8月)は、ブルックナーの最高傑作と言われる交響曲第8番で始まる。ブルックナーの多くの交響曲と同じく、この曲も改訂への道をたどった。1887年に作曲を終えたブルックナーは、自信満々で総譜を送った指揮者ヘルマン・レーヴィから理解不能と告げられてしまう。尊敬するレーヴィの批判に深く落胆したブルックナーは、徹底的な改訂を加え、1890年3月に第2稿を完成させた。初演は1892年12月18日、ハンス・リヒター指揮ウィーン・フィルによって行われたが、ブルックナーは各楽章が終わるごとに拍手で呼び出されるという大成功を収めた。

 作品は重厚で悲劇的に高まっていく第1楽章、優美さと野性味が調和する第2楽章、天国を思わせるように美しい第3楽章、壮麗な大伽藍が築かれる第4楽章という構成で、ブルックナーの交響曲の集大成にふさわしい壮大なスケール感と崇高さがある。

 上岡と新日本フィルは、これまでブルックナーの交響曲のうち第3番、第6番、第7番、第9番を演奏してきたが、いずれも上岡独自の世界が展開された。室内楽のように精緻であると同時に強靭さに裏付けられ、息の長いフレーズの美しさやオーケストラの絶妙のバランスは、他の追随を許さないものがあった。その新鮮な解釈はゾクゾクするほど刺激的だった。対位法などブルックナーが自己の作曲技法を極めた第8番で、上岡と新日本フィルがどのような名演を聴かせてくれるのか、期待は高まるばかりだ。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2020年7月号より)

第623回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
2020.9/3(木)19:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp