アーティストメッセージ(53)~平野 和(バスバリトン)

C)Claudia Prieler
 1年ほど前、テレビで偶然に初音ミクのパリでのライブ映像をテレビで視聴しました。ヴァーチャルアイドルを前に盛り上がる観衆を見て、今後我々の仕事の領域にもAIが進出し、我々の需要が減るのではないかと危惧しました。

 今回のコロナウィルス禍において、我々ライブパフォーマーはそれとは全く違った形で表現・仕事の場を失うことになりました。この苦境において、配信などのコンテンツを最大限に利用し、聴衆・ファンにメッセージや演奏を発信し続けているアーティストも多数います。心から尊敬します。しかし自分は、そのような形でメッセージや演奏を発信するモチベーションと勇気が持てず、ただただこの状況と無力な自分に困惑しています。

 以前、東京ヤクルトスワローズに所属する青木宣親選手のインタビューを読んだことがあります。スランプをどの様に脱するかについて質問された時、彼はスランプを決してメンタルのせいにせず、とことん自分の体・技術と向き合うことで克服すると答えていました。私はトップアスリートの言葉に大変感銘を受けました。

 表現の気持ちが外に向かない今、私は自分と家族が健康に過ごすこと、そして歌唱の技術を向上させることに全精力を注ぎ込もうと思います。そしてこの騒動が収束し、私たちが舞台に立つことが許されるその日に、グレードアップした姿を皆様にお見せすることをお約束いたします。どうぞ皆様も健康にはくれぐれもご留意ください。

 元気な姿でお会い出来るその日を楽しみにしております。