アーティストメッセージ(49)~佐藤美枝子(ソプラノ)

 日本全国に緊急事態宣言が発令されて幾日も経ちました。まだまだ終息の目処が立たないまま、私達音楽家もいつもとは違う日常を過ごしています。日々の努力を決して怠ることなく、しかし、このような時だからこそ、本来のあるべき姿である、人間らしい時間を過ごす事しかありません。

 世界中が予期せぬテロに遭ったような時代に入っても尚、音楽を生業としている私達に、これから何ができるのだろうか、人間にとって何が大切なのか、今後、人は新たに何に気づき、何に価値を見出していくのだろうかと考える毎日です。

 このウィルスがイタリアに蔓延したとき、イタリア人は自宅のベランダに出て「歌」を歌い、励まし合っていました。その後、在伊の日本のヴァイオリニストは素晴らしい音色で音楽を奏で、医療従事者の方々を励ましていました。精神状態がこのように逼迫した事態にある時、人間本来のあるべき姿、そして、音楽の力というものを改めて感じられるニュースであったと思いました。

 私達はその音楽に携り続けていく中で、自分はもちろん、家族、友人、そして多くの方を励まし、幸せに導く力を持っていることを忘れず、大切に、誇りを持って生きて行かねばならないのだと感じました。
 音楽は無形文化遺産なのです。

 いつも私たちの音楽を楽しみにしてくださっている皆さま。
 お健やかにお過ごしいただき、このウィルスの拡大が終息を迎えた暁に、再び皆様と元気な姿でお目にかかれますことを、心から祈り、願っています。