大野和士(指揮) 東京都交響楽団

2つの“ハ長調”の名作とブルッフの秘曲を披露


 初秋の週末の午後、音楽監督の大野和士が登場する東京都交響楽団プロムナードコンサートで、モーツァルト、ブルッフ、R.シュトラウス、独墺の名作曲家たちが並ぶプログラムが披露される。

 まず、今年没後100年を迎えたブルッフの珍しい「クラリネットとヴィオラのための二重協奏曲」が注目。中声部を受け持つ渋めな2楽器のソロで、温かい音色を生かした柔和な旋律があふれる、とっておきの佳品だ。これをクラリネットの三界秀実、ヴィオラの鈴木学という都響が誇る名首席奏者の美音で聴けるのは喜ばしい限り。

 モーツァルトは交響曲第36番ハ長調「リンツ」、R.シュトラウスは交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、対照的な二作だが、いずれも「ハ長調」がキーとなる興味深い組み合わせ。前者は短期間で一気に作られた、作曲者の天才を存分に示す幸福感あふれる名品。大編成の後者は、有名な序奏でトランペットの「ドソド」のモティーフがハ長調の響きを導き、重要な調になる。ニーチェの哲学書を題材に「自然」と「人間」の相克が描かれる本作は、「自然」をハ長調、「人間」をロ長調と、隣り合うのに同時に鳴ると激しくぶつかる和音で象徴し、最後まで共存することなく謎めいた終結を迎える。自然と人間の“共存”の厳しさを痛感するばかりの現在、そのメッセージはかつてなく重く響くだろう。「リンツ」冒頭の輝かしく屈託のないハ長調和音から、「ツァラトゥストラ」の意味深長な低いハ音の結尾まで、大野と都響の最高の演奏で体感できることを強く信じつつ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年6月号より)

プロムナードコンサート No.388 
2020.9/12(土)14:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp