100歳違いの巨匠2人の時空を超えた熱き邂逅
今年80歳を迎えた小林研一郎が、自らが音楽監督を務める東京文化会館主催のシリーズ《響の森》で、東京都交響楽団を相手にオール・チャイコフスキー・プログラムを振る。チャイコフスキーが生まれたのが1840年であるから、小林とチャイコフスキーとはちょうど100歳違い。小林がチャイコフスキーを得意としているのには、何か運命的なものが感じられる。なかでも交響曲第5番は、小林の最も演奏頻度の高い交響曲の一つであり、十八番中の十八番である。“運命の動機”を中心とした作品のドラマティックな展開や美しい旋律の第2楽章などの歌謡性がマエストロの音楽性にぴったりとマッチする。小林が1978年から5年間にわたり正指揮者を務めるなど、長きにわたって信頼関係を築いてきた都響の演奏にも注目だ。
前半のヴァイオリン協奏曲で独奏を務めるのは、木嶋真優。ザハール・ブロンに師事し、今は亡きムスティスラフ・ロストロポーヴィチと共演を重ねるなど、ロシア系の音楽家から多大な薫陶を受けている彼女にとって、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は最も得意とするレパートリーの一つである。2016年第1回上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝するなど、ますます進化を続ける木嶋の演奏が楽しみだ。
小林の生誕80年とチャイコフスキーの生誕180年を名曲中の名曲で祝うコンサート。マエストロ・コバケンと木嶋とが情熱的な演奏を繰り広げるに違いない。
文:山田治生
(ぶらあぼ2020年5月号より)
2020.7/14(火)19:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp