【CD】アンナー・ビルスマ in 東京/アンナー・ビルスマ&渡邊順生

 昨年9月に世を去った、バロック・チェロの先駆者アンナー・ビルスマ。彼は1999年、日本での古楽普及に尽力し、前年に逝去した音楽評論家の佐々木節夫を偲ぶステージを、自らの発案で開いた。当盤は、この時の全演奏を収録。ビルスマにとって、唯一のライヴ録音盤でもある。冒頭に収録されたボッケリーニの第1音から、溢れ出る愉悦。そのまま、一気に最後の「無言歌」へと、自然に音楽が流れてゆく。楽器を背負って自転車をこぎ、近所の教会へ向かい、興の赴くままに弾く。そんな彼の日常が投影されたよう。共演の渡邊順生も、表現の伸縮をつぶさに受け止める名サポートだ。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2020年5月号より)

【information】
CD『アンナー・ビルスマ in 東京/アンナー・ビルスマ&渡邊順生』

ボッケリーニ:チェロと通奏低音のためのソナタ イ長調/メンデルスゾーン:協奏的変奏曲 ニ長調、チェロとピアノのための無言歌 ニ長調/ベートーヴェン:チェロとピアノのためのソナタ第4番・第3番

アンナー・ビルスマ(チェロ)
渡邊順生(フォルテピアノ)

収録:1999年10月、日本福音ルーテル東京教会(ライヴ)
コジマ録音
ALCD-1196 ¥2500+税