“ギター界の女王”が深い解釈で描くポンセの大作
彼女の「アランフェス協奏曲」の演奏を聴いた作曲者ロドリーゴが「セゴビアの後継者」と絶賛したマリア・エステル・グスマン。“ギター界の女王”と呼ばれるほどの実力の持ち主で、来日公演も多い。2018年にはスペイン音楽を集めたアルバム『アンダルーサ』をリリースしたが、この2月にも注目の新アルバム『ポンセ:スペインのフォリアによる変奏曲とフーガ』がリリースされる。その選曲意図、作品への想いなどを聞いてみた。
「ご存知のようにクラシックギターの重要な作曲家は中南米とスペインから出ています。そこで私は3つの国、アルゼンチン、メキシコ、スペインから作曲家を選び、アルバムを作ることにしました。特に、技術的な難しさからなかなか演奏機会のないロドリーゴの『トリプティコ』とポンセの『スペインのフォリアによる変奏曲とフーガ』を私のレパートリーから選び、収録しました。疑いなく『トリプティコ』の3つの楽章はとても難しいものです。Nocturnoの音楽的なタッチ、ソフトなフレージング、PreludioとScherzoでは短いアーティキュレーションで奏される音階や速いアルペジオの反復など。この『トリプティコ』でリズム、アクセント、エネルギーを維持することはまるで山の頂にいるような感じです」
メキシコの作曲家で、セゴビアとの出会いから数々の傑作を生み出したポンセの作品も、また興味深い。
「この作品はどの変奏も技巧的な要素を含み、ギターのネックを上下に行き来することになります。多くのイマジネーション、新鮮な雰囲気があり、そして最後のフーガまで転調を重ねていきます。すべての変奏を異なる扱い方で処理しているので、時にはフォリアの主題から離れていきますが、素晴らしい魅力を持った作品だと思います」
ピアソラの「リベルタンゴ」は彼女自身の編曲によるものだ。
「この作品の持つパワーと元々のキャラクターを失わないようにしつつ、私独自の視点からハーモニクスや打楽器的な効果を加えています。アレンジや解釈において自由に向き合える曲ですが、メロディ、リズム、ハーモニーの完璧なバランスを保つよう注意しました」
日本ではフォルクローレのギタリスト、歌手として知られるユパンキ。グスマンは「作家であり詩人でもあったユパンキの作品はクレオールとクラシック音楽を繋ぐアルゼンチンのギター音楽の重要な架け橋」と評価する。他にもグスマンと親交の深かった女性ギタリストの草分け的存在アニードの作品など、語り尽くせない魅力が詰まったアルバムである。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2020年3月号より)
「ギター界の女王」マリア・エステル・グスマン 来日ツアー2020
2020.10/16(金)横浜/杉田劇場
10/20(火)札幌/ふきのとうホール
10/27(火)東京/GGサロン ほか
問:カンパニージャ090-5505-8757
CD『ポンセ:スペインのフォリアによる変奏曲とフーガ』
マイスター・ミュージック
MM-4074 ¥3000+税
2/25(火)発売