【SACD】武満徹:管弦楽曲集/諏訪内晶子&P.ヤルヴィ&N響

 パーヴォの”武満観“とも言うべきものが伝わってくるアルバムだ。最初に収められた「弦楽のためのレクイエム」は、透明な音の塊が突如として空間に出現したという印象だ。一瞬にして聴き手の懐へと滑りこみ、確かな存在感を放つ。そのシュールな音の佇まいにおののいていると、「ノスタルジア」ではヴァイオリン(諏訪内晶子)の慟哭の中で音楽が流れ出し、「ハウ・スロー・ザ・ウィンド」で豊穣な音の織物へと発展する。書かれた音を精密に立ち上げるだけでなく、5つの管弦楽曲を連ねることで武満音楽の特性を、筋を通しながら捕まえた点が貴重で、今後の規範的な演奏の一つとなろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年3月号より)

【information】
SACD『武満徹:管弦楽曲集/諏訪内晶子&P.ヤルヴィ&N響』

武満徹:弦楽のためのレクイエム、ノスタルジア―アンドレイ・タルコフスキーの追憶に―、ハウ・スロー・ザ・ウィンド、遠い呼び声の彼方へ!、ア・ウェイ・ア・ローンⅡ

諏訪内晶子(ヴァイオリン)
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
NHK交響楽

収録:2018年2月、サントリーホール(ライヴ) 他
ソニーミュージック
SICC-19045 ¥3200+税