松山バレエ団 新『白鳥の湖』 全4幕

ベテラン2人の初共演で贈る“愛のバレエ”


 松山バレエ団が神奈川県民ホール主催公演として新『白鳥の湖』全幕を上演する。この作品は1994年に清水哲太郎が台本・振付・演出を手がけて初演した一大巨編で、チャイコフスキーの「白鳥の湖」のほぼ全曲を用いる。

 舞台は16世紀の神聖ローマ帝国。公女オデットと皇太子の「真の愛」を通して人間のあるべき理想を描くが、肝となるのが「ルネサンス精神」だと清水は言う。闇の世界を象徴する魔王フォン・ロットバルトとの対決を経て“真善美の勝利”を謳いあげる。
 今回の話題は公女オデット&黒鳥オディールの森下洋子、皇太子・神聖ローマ帝国新皇帝ジークフリードの堀内充の初共演。舞踊歴69年を迎えた森下と国内外で活躍する重鎮・堀内が壮大な舞踊劇をいかに演じるのか要注目だ。演奏は河合尚市指揮の東京ニューフィルハーモニック管弦楽団。

 記者懇談会の席上、森下は堀内の印象を問われ「清々しい。長い間バレエをやっていても“慣れた”感じがない」とストイックな姿勢を称える。堀内は松山バレエ団との稽古を通して「バレエに対する敬虔、尊敬の念の深さ」を感じると話し、「森下先生の芸術観・舞踊観に少しでも近づいていきたい」と意欲を示す。森下は本作を通して「多くの方々に幸せや喜び、生きていることの素晴らしさ、ありがたさ、感謝の気持ちを伝えたい」と抱負を述べた。

 表題にある「新」には上演のたびに「新しくしていきたい」という清水の思いが込められている。神奈川県民ホールでは実に25年ぶりの上演となるだけに期待したい。
文:高橋森彦
(ぶらあぼ2020年3月号より)

*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、本公演は中止となりました。(3/11主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

2020.3/20(金・祝)15:30 神奈川県民ホール
問:チケットかながわ0570-015-415 
https://www.kanagawa-kenminhall.com