音楽が音楽の概念の外側へと逃走していく、困った、そして尖ったアルバムだ。電子音との競演(ヴァン・デル・アー)、摩擦音などの多重録音(三輪)、エレキギターとベースの録音の作曲家自身によるリミックス(中川)。口笛や歯ぎしりによるパフォーマンス(ステーン=アナーセン)の後には、調弦をずらした5台のギターがパワフルな打撃音を加える(バーク)。その中にあって、西風作品の単音のつながりがポエジーを放つ。音楽は何であってもいいのだという自由さに、聴き手の感性もいつの間にか解放されていく。山田岳のパフォーマーとしての類まれなる才能あってこそのアクロバットだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年3月号より)
【information】
CD『メロディア/山田岳』
ミシェル・ヴァン・デル・アー:栗毛色/近藤譲:オリエント・オリエンテーション/山本裕之:葉理/三輪眞弘:七ヶ岳のロンド/シモン・ステーン=アナーセン:実践の難しさ/中川統雄:滅びの中の滅び/西風満紀子:メロディア―ギター/ロイス・V・バーク:五ギター
山田岳(ギター/パフォーマンス)
佐藤紀雄(エレクトリック・ギター)
コジマ録音
ALCD-123 ¥2800+税