明日を担う音楽家による特別演奏会

新鋭歌手たちが勢ぞろいする華麗なるステージ


 「オペラ界の新星たち」を身近に感じたければ、3月5日の東京・初台に足を向けてみては? 文化庁の新進芸術家海外研修を終えた若手歌手による「明日を担う音楽家による特別演奏会」で、今年は7名が声を競うとのこと。まずはプログラミングにご注目を。オフェリの悲痛な〈狂乱の場〉とワーグナーの耽美的な〈イゾルデの愛の死〉、ロルツィングの怒りのアリアにヴェルディの無常観漂う〈ロドリーゴの死〉と、対照的な曲調で上手く配置されている。

 それでは女声から紹介しよう。超高音をきらめかせ、抒情性も際立つ鈴木玲奈、柔らかい響きでメロディを官能的に膨らませる竹下裕美のソプラノ2人に、ロッシーニやフランスもので声の技を爽やかに披露する金澤桃子、きりっとした面差しと濃く豊かな歌いぶりが魅力的な藤田彩歌と、将来有望なメゾソプラノ2人が出演する。

 一方の男声陣も気鋭の逸材ばかり。得意のイタリア・オペラで声音をしなやかに操るテノール山本耕平、ベルリンに学び、ドイツ語のオペラに若々しい声で取り組むバリトン深瀬廉、ヒロイックな歌いぶりと華やかな個性で客席をすぐさま惹きつけるバリトン村松恒矢と最前線をひた走る3名がステージに集う。そして、指揮台に立つのは、これまた若手の代表格、角田鋼亮。長身から繰り出すダイナミックな棒捌きで、オペラに強い東京フィルハーモニー交響楽団とともに、フレッシュな美声を力強く支えてくれるだろう。
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2020年2月号より)


*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、本公演は中止となりました。(2/28主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

2020.3/5(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:チケットスペース03-3234-9999 
https://www.ints.co.jp