アニバーサリーを彩る名手たちによる渾身のプログラム
1995年4月にオープンした紀尾井ホールが、開館25周年を記念する2020年度の主催公演のラインナップを発表した。日本を代表する音楽専用中規模ホールとして、東京でのリサイタル、室内楽、室内オーケストラの演奏会のメッカとなっている紀尾井ホールらしい公演が並ぶ。なかでも、同ホールと関わりの深い、ペーター・レーゼル、クリスティアン・テツラフ、マリオ・ブルネロの3人の公演は注目だ。
1945年ドレスデン生まれのレーゼルは、戦後、東ドイツを代表するピアニストとして活躍。そんな彼が、2020年、日本での最後のリサイタルを紀尾井ホールでひらく。レーゼルとホールの結びつきは強く、08年から11年にかけて、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を演奏し、それらはライヴ録音され、全集としてCD化された。今回は、ハイドンのソナタ第52番、ベートーヴェンのソナタ第32番、シューベルトのソナタ第21番という、レーゼルが得意とする3人の作曲家の最後のソナタが並べられている。まさに「フェアウェル・リサイタル」にふさわしいこの選曲は、07年の彼の紀尾井ホールでの初リサイタルと同じプログラムでもある(5/15)。
14年にはテツラフ・クァルテットで、15年にはバッハの無伴奏全曲を演奏し、紀尾井ホールに登場してきたテツラフ。今回は、ベートーヴェンの生誕250年を祝して、「ベートーヴェン・セレブレーション」と題し、テツラフ・クァルテットとともに、彼の晩年の弦楽四重奏曲第13番「大フーガ付」、第15番、第16番を取り上げる。また、盟友ともいうべき、ピアノのラルス・フォークトとテツラフ・クァルテットで、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲第2番を共演。フォークトやクァルテットのメンバーでもある妹のターニャ・テツラフとともにブラームスのピアノ三重奏曲第2番を演奏するのも楽しみ(9/25,9/27)。
ソリストとして、あるいは、紀尾井ホール室内管弦楽団(旧称:紀尾井シンフォニエッタ東京)の指揮者・共演者として、たびたび紀尾井ホールで演奏し、聴衆から愛されるブルネロがホール開館25周年を祝して帰って来る。今回は、チェロとチェロ・ピッコロを使って、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲)」と「無伴奏チェロ組曲(全曲)」を交互に織り交ぜて、2日間にわたって弾く(11/1,11/3)。それぞれに長大な作品であるが、ブルネロが心温まるバッハ演奏を聴かせてくれるに違いない。
*新型コロナウィルス感染症の感染拡大を考慮し、ペーター・レーゼルの公演は延期となりました。(4/9主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
https://kioihall.jp
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