紀平凱成(ピアノ)

ミラクルな18歳が放つファンタジーとカプースチンの世界

 新たな音楽性がまた一つ芽吹き、その個性を輝かせようとしている。紀平凱成、18歳。オリジナル4曲と、カプースチン作品3曲を収めたデビュー・アルバム『Miracle』がリリースされた。「CDが出ると決まったときは、とてもワクワクしました!」と笑顔を見せる。

 彼の存在はテレビの情報番組などでも紹介されてきたので、ご存知の方も多いだろう。2歳で自閉症と診断された。一方、当時から抜群の耳の良さを発揮し、父のCDラックからお気に入りを取り出しては、母の電子オルガンでコピーし始めた。「ビートルズやビリー・ジョエル、ガーシュウィンやシューマンが大好きでした。ピアノを始めたのは6歳です」。

 レッスンに通い始めて9ヵ月後の発表会では、自らの希望で「イマジン」の弾き語りをした。自分の声のキーに合わせて移調し、周囲を驚かせたという。

「7歳でピアニストになろうと決めました。中学の頃は周りに苦手な音もあったけど、ピアノを弾いているときは安心できるし、優しい気持ちになれました。やる気が出ずイヤになったこともあったけど、僕の音楽をお客さんに聴いてもらえるのは嬉しい」

 高校2年生で出演した「eplus LIVING ROOM CAFE&DINING」でのコンサートを通じ、音楽を人に届けたいという意識が強まった。
「ファンの方からお花をいただいたときもすごく嬉しかった。ライヴが好きなので、もっと大きなところで演奏したい」

 作曲やアレンジは我流で進め、思いつくフレーズはどんどん楽譜に書き付けてきた。その数1000曲ほど。音数の多いフレーズを、端正でリズミカルな筆致で書く。初アルバムの4曲を含め、いつも英語のタイトルを付けている。
「〈Winds Send Love〉はたくさんの風、〈Tennis Boy Rag〉は楽しいイメージの曲。いろいろなことを、感じ取ってほしいです」

 ピュアでありながら意外性のあるハーモニー、流動的で歌うような彼のメロディには、朗らかさが溢れる。
 カプースチンを弾き始めたのは4年生のとき。15歳で「カプースチン祭り」に出演したのをきっかけに川上昌裕に師事。今回レコーディングした「サウンズ・オブ・ビッグ・バンド」は彼が初めて弾いたカプースチン作品でもある。
「歯切れの良いスウィングの曲です。ほかの2曲もカプースチンのいろんな曲調が楽しめます。メロディが綺麗だし、リズムや和音が複雑でカッコいい。このアルバムを聴く人には、笑顔いっぱいになってほしい」

 ピアノ協奏曲を作り、オーケストラと演奏するのが夢。才能の行方に注目していきたい。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年12月号より)

紀平凱成 ピアノリサイタル「Miracle」
2019.12/23(月)18:30 東京/王子ホール
2020.1/18(土)13:30 大阪/ザ・フェニックスホール
問:イープラス kyle-info@eplus.co.jp

CD『Miracle』
イープラス
em-0001 ¥2700+税

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